感
†何氣ない出來亊にも、 ひとつひとつに祈りを。 感謝の心を忘れずに、 ひとつひとつを、 祈りと共に。
†紅いワインを。 硬いパンを。 日を越して行われる、 復活の賜物をこの身に。
†さらさらと、 形成されてゆく、 心の片隅に芽生えた、 小さな、 小さな決意。
†祈りの言葉は、 記憶の中に、 深く刻まれ、 明日を想う、 人々の疲れに、 そっと沁み込む。
†色褪せた、 この空、人、 木々の中に、 ただ透明な矢が、 音もなく靜かに、 降り注いでいる。
†喉を流れる、 まるで命の水の様な、 その甘美さに、 有り難さに、 溺れているだけの、 午前三時。
†見上げた空に、 逆さに視る空に、 流れる物の正体を、 目を凝らす亊なく、 ただ流れる様に、 見詰めているだけ。
†藍と橙に別れ、 空に描かれた、 生命が紡ぐ線。 時に隠された、 明けの日の夢。
†明の色。 午の色。 暮の色。 宵の色。 再び合える亊のない、 日毎時毎流れ変わる、 空という絵。 今夕。 西の彼方に広がる空の劇場。 淡い橙色に緑淡色の混ざった、 ほろ苦い混合酒の様な色彩の、 夕空に浮かぶ影雲の群れが、 雲海にみる山々の様にみえた。
†彼方と此方を往復し、 浮上してから空をみる。 窓を開けるとまた薫る。 昨日とは少し違って、 怖い程に余りに遡り過ぎて、 幾つかの感情が中を駆け巡り、 虗藭回路を破壊しては修復する。 けれど窓を閉じる亊が出來ない。 閉じたら心も閉ざされて了う。
†目覚めてから窓を開け、 外空氣に触れていると、 何だか妙な感覚があった。 暫くの間そうしていると、 嗅覚を通じて脳内に伝わり、 『その出來亊の数々』が、 途端、一気に溢れ出した。 創作意欲の異常な日々。 願想いが伝わるのかという不安。 訪れた地で…
†靜か過ぎるこの夜の果て。 途方に暮れるには早過ぎる。 ただ目を閉じて耳を澄ます。 秒針の奏でる音が心に響く。 難しい亊では無い。 特別な亊でも無い。 ただ時を忘れるだけで、 穏やかな波がさざめく。
†予感した色の的中。 ほら、やっぱり、ね。 昨夜、月と風の具合からして、 今日は晴れると確信していた。 眠りから醒めると、 強めの風と晴れ空。 自分のした亊だとはいえ、 まったくもって口惜しい。 何も無いのなら喜んで外出したろう。 然し何かあって了…
†『最近、漸く散歩が出来る様になったんだ。 最初は着せられた服が窮屈で歩きづらかった。 だけど何度も散歩に行くうちに慣れてきたよ。 それに今は何処へ行っても人気者なんだ。 大きい犬も小さい犬も皆吠えるけど怖くない。 僕からしたら「だから何?」っ…
†砂嵐の様に。再び。 現れては消える。幻の。 全て自分の中から。 遠くから鳴り響く記憶。 その煩さの欠片の中。 ひとり、わたしが。
†少し斜めになって、 硝子越しに眺めていた。 風を嗅ぎたくなって、 窓を開けてまた眺めた。 空の色は変わり続ける。 何処かへ行って了う雲も、 それを彩る夕刻の色も、 どうしてあんなにも、 届かない所にあるのだろう。 どんな色彩用具を、 用いてみても表…
†乾いた涙の痕を視る。 それは人工液体の痕。 欺いた瞳の色は灰色。 零れ堕ちた言葉は闇。 闇から雫が溢れる。 偽らざる雫の色に、 空が共鳴するかの様に甘粒を。
†私の足の歩く速さに、 合わせて動いている様な、 そんな嬉しい亊を感じた、 幼い日々と変わらぬ感覚。 歩いてゆくと、 建物と建物の間に、 消えては現る、 まるでただ、 愉しむだけの、 かくれんぼの様。
†今よりも子供の頃のほうが、 まだ強かったかも知れない。 一人社会に抛り出される、 ずっと前から独りだったから。 それでも寂しいとかではなく― ―否、寂しかったかも知れないが、 どちらかというと逆境的な状況を、 どこかで克服しようとしていた。 もしか…
†昨年に戴いた若木に、 小さな葉が幾つか生まれた。 大きな葉と同じ形をしている、 それがとても愛らしく微笑ましい。 春になり、そして夏になる頃には、 花とも出合える亊を祈りつつ。
"夕刻劇場" †ちょいと珈琲を、と思い夕刻、 握り小銭で一人外に出てみると、 好い具合の暮れ色に染まっている。 過去より繋がる不思議で素敵な彩り。 さて、と道へ一歩を踏み出した時、 頭上より烏の合唱が聞こえてきた。 何亊かと仰ぎ見ると何ともまあ、 母…
†夜に咲く欠けた月は美しく、 氷塊の心を冷たく見下ろす。 路上の花すら息を潜めて窺う。 機嫌を損ねた様な月を。
†少しでも気を抜けない、 大きな大きな路脈。 地上も地下も、 張られた網の様で、 まるで体内を巡る脈だ。
†舞い上がる風が少しずつ躰温を奪ってゆく。 冷たくなった手を息で温めながらの散歩道。 もうすぐ夕の陽があの空の彼方へ帰ってゆく。 時が止まる感覚がしてはまた脈の様に流れて、 陽の光が淡い橙色から蒼い色彩へと変わる。 出会えた日に対する喜びと感謝…
†振り返ると橙色の陽。 前方を仰ぎ見ると白い月。 一つの空に二つの存在。 どちらも私の好きな存在。 街路樹の下を歩きながら、 記憶を振り返ってみた。 長く歩いて来た色彩の道。 握っていた拳の力を抜いて、 俯きがちな顔を上げて歩いた。 当たり前の様に…
†待つ亊の大変さを、 心躰を崩して解った。 さすがに精神が痛い。 躰にも影響が出ている。 だけど負けたくない。 いつも待ち続ける人の気持ちも、 こんなに痛いのだろうか。
†實に心地良い青と風。 極彩色の虎の夢から目覚めると、 青と風が日々を怠るなと叱咤する。 体のあちらこちらが痛むけれど。 心の何処かが首を傾げるけれど。 感じる儘に任せていると、 少しだけ淨化されたのがわかった。 来るその瞬間に迎えて、 目を閉じて…
†あなたが求めているものは、 私という命ある人間ではない。 あなたが私に求めているもの。 それは私という人形にみる幻。 こうあって欲しいと創りあげた、 我儘なあなたの想願いの化身。 実はあなたは私の中を、 覗いた亊など一度も無くて、 ただただ情に流…
†遠い日に生きた旅人の言葉が蘇る。 その眼差しは深い泉の様に優しかったが、 紡がれる言葉の中には優しさはなかった。 壊れた時計をくれた旅人は西の空を見上げ、 お前もそろそろ旅立たなければならないと言った。 私も倣って西の空を見上げてみたけれど、 …
†あれからもうすぐ一年経つ。 寒風は過ぎ去り、 桜も舞い散り、 熱気が身を焦がした。 そしてそろそろ外套が必要になる。 まさかこんなにも早く流れるなんて。 あの時の私と今の私は確実に違う。 毎年違うとは感じているけれど、 今年―特に今月に入ってから…