月を呼ぶもの

"夕刻劇場"




†ちょいと珈琲を、と思い夕刻、
握り小銭で一人外に出てみると、
好い具合の暮れ色に染まっている。
過去より繋がる不思議で素敵な彩り。
さて、と道へ一歩を踏み出した時、
頭上より烏の合唱が聞こえてきた。
何亊かと仰ぎ見ると何ともまあ、
母のよな柔らかな月とは対の方角へ群れて、
まるでお家へ帰るお子らの様で微笑ましい。
月に見守られて自由気に飛び回る烏達は、
群れながらも各々が思うが儘に風を泳いだ後、
月の照らす闇の中へと溶け込む様に舞ってゆく。
夜の主である、
彼女に光を託す為に。