緩やかな時

追憶の道

†一年前のあの日。
この道を懐かしむ人々が一軒の民家へ集った。
現在は一人でそこに居を構えていらっしゃる、
齢八十を迎えられた淑女の為だった。
各々、好きな時間に到着した様だが、
私が一番遅く到着した。いつもそうだ。




華やかでのんびりとした夕餉も終わり、
愈々夜がやって来た頃、小さな宴が始まった。
然し明日は早くから館にて本格的な宴が開かれる為、
早く床に就かなければならなかった。
酒を手に楽しげに語り合う人々と淑女に挨拶を済ませ、
割り当てられた階上の部屋へ向かった。



翌朝。
淡い夢から目が覚めると、
私を除く全ての人々が既に身支度を終えていた。
確か真夜中過ぎまで騒いでいた筈だが…。
それにしても何故、誰も起こしてくれない。
憤慨したが自分のせいだ。仕方無い。
布団を撥ね退け急いで階段を駆け下り身支度を始めた。