望臨

神秘

†小さい頃に連れて行かれた水族館で、
色々と見て回るうちに、ある水槽の前を通りかかった。
その水槽の中で悠々と泳ぐ魚と目が合った瞬間から、
言い様の無い恐怖感が込み上げて以来、
水族館や海など魚のいる所を避ける様になっていた。





あの頃と今とでは違うかも知れない。
そう考えて暇な日に水族館に行ってみようと思った。
少しの懐かしさと未だ残る小さな怖れ。
しかし。
そんなに大きな水槽ではなかったけれど、
今、目の前に広がる群れには心を奪われるものがあった。
目を合わせるのではなくて、ただ見惚れていた。
どのくらい水槽の前で佇んでいたのかすら、
忘れてしまえる程にその群れは美しかった。
同一色の、見慣れた風景にはない輝きを放っていた。