潜憶

†目覚めると陽は帰り路につこうとしていた。
淡く彩る空の下には緩やかに流れる町並み。
昨夜の眠剤が後を引いているのか軽く頭痛がする。
喉が渇くのに煙草を喫んでしまう。



何だか自分の体温と同じ液体にそっと触れている、
そんな感触であまり現実感を伴わない。偶の事。



横になると引き込まれそうだから起きたままでいる。
ひとたび目を閉じて了うだけで脳が悪戯を働き始め、
深く誘われて、いつの事なのか、実際にあったのか、
そんな判然としない様な記憶の世界に潜りゆく感覚。
そこで視たもの。赤と蒼の艶かしい空に無数の星。
そこにあるもの。此処にはない現実の世界。黒い服。