退いて

†目の前に一本しかない長い道が。
その果ての辺りに目を凝らす。
誰かが後ろ向きで立っていた。
ずっと昔に視た懐かしい影の様。
確かめたくて近付いて行った。


懐かしい影。一つ思い出すのは幼少時代。
それは当時、ただの幻だった。
いる筈のない人がそこにいた。
人間らしくない動きで。
幼さは恐怖を感じなかった。
確かめに硝子戸を開いたら消えていたのに。


再び同じ幻ならと思いながら近付く。
恐怖と興味。あの頃とは感覚が違う。
もう触れられそうな距離になった。
手を伸ばす。叩きたくない肩なのに。
そっと触れたつもりが力が入っていた。
人影がぐるりと振り向いた。


目が覚める。